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高齢化社会と医療DX 〜地域と診療所をつなぐ新しい医療のかたち〜

2025/11/21

はじめに:進む高齢化と、変わる医療のかたち
日本は、世界に類を見ない「超高齢社会」に突入しています。
総務省の統計によると、2025年には65歳以上の人口が全体の約3割を超える見込みです。
高齢化の進展は、医療現場に大きな影響を及ぼしています。慢性疾患を抱える患者が増え、通院が難しくなる方も多く、在宅医療や訪問診療の需要は年々高まっています。
一方で、医師・看護師・医療スタッフの人手不足は深刻化。
「患者数は増えるのに、支える人が足りない」という構造的な課題に、現場は直面しています。
この課題を乗り越える鍵として、いま注目されているのが医療DX(デジタルトランスフォーメーション)です。

●医療DXがもたらす変化:IT化ではなく“医療の再設計”

医療DXは、単なる「紙を電子化する」取り組みではありません。
デジタル技術を使って、医療の提供のしかたそのものを変革することを意味します。
たとえば、オンライン診療、電子処方箋、PHR(パーソナルヘルス レコード)やウェアラブル機器による健康管理などが挙げられます。
これらを組み合わせることで、医師・患者・家族・介護関係者が同じ情報を共有できるようになり、診療の質とスピードが大きく向上します。
特に高齢者医療においては、通院の負担軽減在宅ケアの充実地域連携の効率化など、DXの恩恵が直接的に表れやすい分野です。

●現場で進む変化:DX活用の3つのシーン

1. 通院を支える「オンライン診療・服薬指導」

移動が難しい高齢患者にとって、オンライン診療は大きな助けになります。
スマートフォンやタブレットを通じて医師とつながることで、自宅での定期診察や服薬相談が可能になります。
医療機関側も移動時間を削減でき、限られた人員でより多くの患者を支援できるようになります。
厚生労働省の調査でも、高齢者世帯でのオンライン診療利用は年々増加傾向にあります。
家族や訪問看護師のサポートを得ながら利用するケースが多く、地域ぐるみの支援が広がっています。

2. 「在宅医療と介護」の情報共有で安心を広げる

高齢化が進む中で、医療と介護の連携は不可欠です。
従来は「病院」「診療所」「訪問看護」「ケアマネ」「薬局」がそれぞれ独立して記録を管理していましたが、医療DXによって、一つのプラットフォーム上で情報を共有できるようになってきました。
これにより、服薬内容の重複や連絡漏れが減り、緊急時の対応もスムーズになります。
特に、地域包括ケアを推進する自治体では、電子カルテやケア記録をクラウドで連携する取り組みが進んでいます。
医療DXは、「つながる医療」を実現するための基盤でもあります。

3. PHRとウェアラブル機器で「予防型医療」へ

PHR(パーソナル ヘルス レコード)とは、生涯にわたる個人の健康・医療に関わる情報(個人の健康や身体の情報を記録した健康・医療・介護などのデータ)のことです。
血圧や心拍数、歩数、睡眠データなどをスマートウォッチや測定機器から自動で収集し、医師と共有します。
このデータをもとに、生活習慣の変化や異常の兆候を早期に察知できるようになります。
慢性疾患の重症化を防ぎ、「病気になる前に対応する医療」へとシフトが進んでいます。
こうした取り組みは、医療費の適正化にもつながり、社会全体の持続可能な医療体制の構築に寄与します。

高齢者がDXの恩恵を受けるために必要なこと

医療DXの利点が明らかであっても、高齢者本人がデジタル機器に慣れていない場合、導入が難しいこともあります。
したがって、DXを成功させるには「技術」だけでなく「支援」が欠かせません。
たとえば、
  • 家族や地域包括支援センターによる操作サポート
  • 医療機関での丁寧な説明・利用案内
  • 操作が簡単なUI(ユーザーインターフェース)設計
といった取り組みが求められます。
自治体や企業による「デジタル支援員」制度も広がりつつあり、今後はこうした支援体制がDX普及のカギを握ります。
 

●DXを支える信頼性と地域連携

医療DXを進めるうえで重要なのが、「セキュリティ」と「標準化」です。
個人の医療情報は最もセンシティブなデータの一つであり、厳格な管理が求められます。
現在、政府は「医療DX推進本部」を設置し、電子カルテ情報の標準化(HL7 FHIR対応)やマイナンバーカードを活用した保険証の統合を進めています。
これにより、医療機関間でのデータ連携が容易になり、地域医療連携ネットワークの構築が加速しています。
DXの本質は、単なるデジタル化ではなく、「人と人をつなぐこと」。
医療、介護、行政、ITベンダーが協力し、信頼のもとに情報を共有できる環境を整えることが重要です。

まとめ:DXで支える自立と安心の医療へ
高齢化社会では、医療DXはもはや選択肢ではなく、医療を持続させるための必然的な取り組みです。
DXの力で、「遠くてもつながる医療」「支え合う地域」「安心して暮らせる社会」を実現することができます。
その中心にあるのは、テクノロジーではなく「人」です。
高齢者一人ひとりの生活に寄り添い、誰も取り残さないデジタル化を進めること。
それこそが、医療DXが果たすべき本当の役割ではないでしょうか。