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医療DXの進展と現場に広がる不安 ~【効率化】だけでは語れない実情とは~

2025/12/15

 

はじめに

医療・介護分野のDX化はこれまでにないスピードで進行しています。 オンライン資格確認、電子処方箋、電子カルテ共有、医療情報ネットワーク連携、施設・医療機関間データ統合、デジタル環境の整備は、【利便性】【効率化】【透明性】を旗印に推進されています。しかし、現場からは同時に、導入前には想像できなかった不安や負担も寄せられるようになりました。 本稿では、【医療DX=便利で効率的】という一面的な印象から一歩踏み込み、現場が抱える不安と課題を整理します。  

1. 個人情報漏えいリスクと責任の重さ

医療・介護のデジタル化によって、施設が扱うデータ量は急増しています。 利用者基本情報、病歴、投薬情報、保険資格、介護記録、機能訓練データなど、多岐にわたる情報がネットワーク上で連携されるようになると、情報漏えいリスクは従来以上に高まります。 特に現場から多く聞かれるのは、 「漏えいは“事故”では済まない。組織の信用そのものが失われる」 という強いプレッシャーです。 端末管理・権限管理・通信暗号化・二段階認証など、セキュリティ要件が年々複雑化する一方で、実際の管理者は医療職・介護職が兼務しているケースがほとんどです。 「管理責任は増すのに専門スキルは追いつかない」というギャップが、現場の大きな心理的不安となっています。  

2.システム障害=業務停止へ直結する構造

DX化によって、受付・会計・レセプト・カルテ・資格確認が全てネットワークに依存するようになりました。 便利である一方、【止まる時は現場すべてが同時に止まる】という脆さも抱えています。   ●回線障害 → 受付停止、保険確認不可 ●システム更新 → 予期しない操作不可 ●停電・災害 → バックアップ体制不十分   紙カルテ運用時代であれば、最低限の診療・介護記録は残せました。しかしデジタル依存が高まる今、BCP(業務継続計画)の整備は必須であるにもかかわらず、現場側の負担で後回しになる構造が生まれています。
 
 

3.導入費以上に重い【運用費・更新費

DX化に補助金が適用される、と聞くと「導入すれば一段落」と感じる施設もあります。 しかし、現場が直面する現実はむしろ逆です。   ●法改正ごとのシステム更新費 ●サーバー保守、クラウド利用料 ●セキュリティ対策費の継続負担 ●教育・研修・サポート費   特に、2023年以降のオンライン資格確認義務化により、“導入はできたが維持と管理が難しい” という声が急増しています。 DXは【機器を買えば終わり】ではなく、継続的コストと人材確保が前提となる変化であるにもかかわらず、その負担感は導入前に十分共有されないまま進行しています。  

4.ITリテラシー格差と教育コスト

介護・医療現場は幅広い年代の人材が働く職場です。 全員がデジタルツールに慣れているわけではなく、   ●更新通知が出ると怖くて触れない ●ログインが複数あり混乱する ●操作忘れが業務停滞につながる   といった日常的なストレスが生まれています。 DXが加速するほど、「触り慣れた紙からの断絶」が強制され、心理的負担は職種・年代を問わず蓄積しています。
 

5.ベンダー依存体制による運用ストレス

医療DXは高度な専門性を伴うため、導入後もベンダーへの依存度が高くなります。   ●設定変更は必ず業者経由 ●マニュアルが不十分でブラックボックス化 ●トラブル対応が遅いと現場業務が止まる 現場が求めているのは、「高機能システム」よりも「止まらず、誰でも扱える環境」です。  

まとめ:DX推進の本質は利便性ではなく“運用の安心”へ

医療DXは、国の方針として今後さらに加速していきます。
しかし、現場の実情を見れば、DXは決して【効率化】【合理化】だけで語れるものではありません。
情報漏えい責任の重さ
障害時の脆弱性
維持費・更新費の負担
人材教育の継続コスト
ベンダー依存による不自由さ
これらの課題を正しく理解しないまま導入を進めれば、
DXは負担増・現場疲弊・離職加速の要因になりかねません。
だからこそ、今後を見据えた今求められるのは、
【“便利な未来”より先に、“止まらない日常”】の設計
【“高機能”より先に、“誰でも扱える仕組み”】
という基本視点です。