医療DXの不安を“活かす”視点へ ~現場が疲弊しないための具体的な解決策~
2025/12/25
はじめに
医療DXは、単なるデジタル化でも、最先端技術導入の競争でもありません。 現場の安全性、継続性、そして利用者・患者の安心を守るための【仕組みづくり】です。 しかし、前回のコラム【医療DXの進展と現場に広がる不安】で整理した通り、 デジタル化は利便性の裏側に多くの負担を生み、現場では心理的・業務的ストレスが蓄積しています。 本稿では、現場にのしかかる不安を解消し、持続可能なDX運用へ転換するための具体的アプローチを示します。1. “止まらない仕組み”をつくるBCP策定
DXが推進されるほど、停電・通信障害時の脆弱性は増大します。 ただし、ここで重要なのは【最新機器の強化】ではなく、【復旧手順と紙運用ラインを明文化する】ことです。 BCPで最低限明記すべきポイント ●通信断時の保険資格確認フロー ●電子カルテ停止時の記録代替(紙or簡易フォーム) ●災害・停電時の自家発電・非常用電源確認手順 ●ベンダーへの連絡順序と障害受付窓口 現場の不安の多くは、障害そのものではなく 【障害時にどうすべきか誰も知らない】ことに起因します。2.セキュリティ対策は“負担にならない設計”へ
セキュリティ強化は必要ですが、「やればやるほど業務が増える設計」は破綻します。
現場に必要なのは、負担を増やさず継続できる軽量セキュリティ運用です。
現実的な運用ポイント
●パスワードは端末別でなく役割単位に整理
●端末持ち出しはルール化ではなく 物理的禁止
セキュリティを“人間が毎回判断する余地”に任せる限り、
ヒューマンエラーは必ず起きます。
求められるのは【仕組みでミスを発生させない設計】です。
3. 教育ではなく「迷わないUI」の導入
DX導入がうまくいかない理由の多くは、
教育不足ではなく、教育しないと扱えないシステム設計です。
現場が望む理想は、
「誰が触っても自然に使える」
UI(画面設計)のわずかな改善は、
研修10時間分の効果を生むことがあります。
迷いを減らすUI改善例
●ボタン名称は専門語ではなく行動語
(例:申請→送信/退室処理→退出完了)
●よく使う機能は1クリック以内に配置
つまり、DX教育の本質は研修数ではなく、【操作自体が説明不要になる設計】です。
4.段階的DX導入で疲弊を防ぐ
DXは“一気に入れ替える”ほど負荷が跳ね上がります。
正解は、小規模単位で慣らし、定着させてから次へです。
●運用の順番例(段階導入モデル)
① オンライン資格確認→ ② 電子処方箋連携→ ③ データ連携・共有→ ④ 記録・請求・カルテ統合
現場の処理能力に合わせて進めることで、心理的拒否感やシステム疲労を回避できます。
まとめ:DXを【不安の源】から【負担軽減手段】へ
医療DXは、現場が使いこなして初めて価値を生みます。
機能が高度化するほど疲弊が生まれるのではなく、高度であるほど“迷わない仕組み”が求められるのです。
BCPで【止まらない運用】
セキュリティは【人ではなく仕組みで担保】
UI改善で【教育に頼らない運用】
段階導入で【疲弊させないDX化】
DXは「デジタル化」という目的ではなく
医療・介護現場の安心と継続性を守るための手段です。
次のフェーズに向けて求められるのは【技術の最適化ではなく、運用の最適化】
現場に寄り添うDXこそ、持続性と信頼力を生む基盤となります。