健康保険証廃止後の医療現場 ――マイナ保険証・資格情報のお知らせ・資格確認書を正しく理解する
2026/02/02
2025年12月1日をもって、従来の健康保険証は有効期限満了となりました。これにより、医療機関での資格確認は「マイナ保険証」を基本としつつ、「資格情報のお知らせ」や「資格確認書」といった新たな仕組みを組み合わせて行われることになります。
制度としては段階的に周知されてきたものの、実際の運用が始まると、医療現場では患者・スタッフ双方に戸惑いが生じているのが現状です。
ここでは、保険証廃止の背景を踏まえながら、新しい資格確認手段それぞれの役割と、医療現場で押さえておくべきポイントを整理します。
●保険証廃止の背景にあるもの
今回の制度変更は、単なるカードの切り替えではありません。マイナンバー制度を基盤とした医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が大きな目的です。従来の保険証は、資格喪失後も手元に残りやすく、不正利用や確認漏れが起こりやすいという課題がありました。また、転職や引っ越しのたびに新しい保険証が届くまで受診に不安を感じる患者も少なくありませんでした。
オンラインで資格情報を確認できる仕組みへ移行することで、こうした問題を解消し、より正確で効率的な医療提供体制を構築することが期待されています。
●新たな資格確認方法
マイナ保険証による資格確認
マイナ保険証とは、マイナンバーカードを健康保険証として利用する仕組みです。医療機関では、顔認証付きカードリーダーを使用して、本人確認と資格確認を同時に行います。この仕組みの最大の利点は、保険資格をリアルタイムで確認できる点にあります。資格喪失後の受診を防ぎ、返戻や再請求のリスクを減らすことができます。また、患者の同意があれば、過去の薬剤情報や特定健診情報を参照できるため、重複投薬の防止など医療の質向上にもつながります。
一方で、マイナンバーカードを持っていない、暗証番号を忘れてしまった、機器トラブルが起きたといったケースも想定され、すべての患者がスムーズに利用できるわけではありません。
「資格情報のお知らせ」の位置づけ
マイナ保険証を利用していない人向けに、保険者から交付されるのが「資格情報のお知らせ」です。氏名、被保険者番号、保険者名などが記載された書面で、自身の資格情報を把握するためのものです。ただし、「資格情報のお知らせ」はそれ単体では保険資格の確認ができません。医療機関では、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類と併せて確認することが前提となります。あくまで、マイナ保険証を補完する役割である点を、患者にも丁寧に説明する必要があります。
「資格確認書」とは
資格確認書は、マイナンバーカードを取得していない人や、取得していてもマイナ保険証を利用できない(紐づけがされていない)人のために交付されます。資格確認書は、従来の健康保険証と同様に、医療機関の窓口において資格確認が可能です。高齢者や障害のある方、マイナンバーカードの取得が難しい人への配慮として位置づけられており、申請により保険者から交付されます。
見た目や使い方が従来の保険証に近いため、患者側の心理的負担を軽減する役割も担っています。一方で、有効期限が設定されている場合があるため、医療機関側は期限確認を含めた運用が求められます。
保険資格確認に関する特例措置
従来の健康保険証については、特例措置が設けられています。2026年3月31日までは「従来の健康保険証」「資格情報のお知らせ」から確認できた被保険者番号等を参照にオンライン資格確認システム等で資格があると確認できた場合に限り使用可能とされています。
ただし、この経過措置は、新しい資格確認制度への円滑な移行を目的としたものです。医療現場では、「現在は使えるが、将来的にはマイナ保険証や資格確認書が必要になる」という点を丁寧に伝えていくことが、患者の不安軽減や混乱防止につながります。
●医療現場で求められる対応力
健康保険証廃止後の受付業務では、「患者がどの書類を持っているか」によって対応が分かれます。マイナ保険証、資格確認書、資格情報のお知らせ+本人確認書類…それぞれの違いをスタッフが正しく理解していなければ、現場の混乱につながります。また、患者自身が制度を十分に理解していないケースも多く、「これで受診できるのか」という不安を抱えています。制度の説明だけでなく、安心して受診できる雰囲気づくりも重要な役割です。
システム障害や通信トラブル時の対応フローを事前に共有しておくことも、これからの医療現場には欠かせません。
●2026年4月以降、資格確認はどうなるのか
従来の健康保険証に設けられている特例措置は、2026年3月31日で終了予定です。これにより、2026年4月以降は、原則として従来の保険証を用いた資格確認はできなくなります。
今後、医療機関の窓口で用いられる資格確認方法は、
・マイナ保険証
・資格確認書
のいずれかに集約されていくことになります。マイナンバーカードを取得していない、あるいはマイナ保険証の利用が難しい場合でも、資格確認書によって受診が可能な仕組みは維持されるため、すべての人が医療から排除されるわけではありません。
一方で、「今の保険証がいつまで使えるのか」「次は何を準備すればよいのか」といった疑問は、今後さらに増えていくことが予想されます。医療現場においては、制度の変更点を正確に把握するだけでなく、患者の不安や戸惑いに寄り添った説明が、これまで以上に重要になるでしょう。
保険証廃止と新しい資格確認制度への移行は、医療DXの通過点に過ぎません。制度の変化を「負担」として受け止めるのではなく、より安全で質の高い医療を実現するための基盤として、現場に合った形で活用していく視点が、これからの医療機関には求められています。