医療DXとは
2025/02/28

医療DXとは、ICTやAIなどのデジタル技術を活用し、医療提供体制の質・効率・持続可能性を抜本的に変革する取り組みです。従来のアナログ的な医療業務・情報管理を見直し、診療、運用、経営の各レベルで最適化・高度化を図ることを目的としています。 日本では、超高齢社会・医療人材の偏在・医療費の増加といった構造的課題に対応する手段として、政府が2022年より本格的に医療DXを推進。医療機関における電子カルテの標準化、診療情報の共有、マイナンバーカードによる資格確認(オンライン資格確認)、さらには全国医療情報プラットフォームの整備などが段階的に進められています。
●医療DXによって医師にもたらされる変化と利点
診療支援の高度化
AIを活用した画像診断支援や、自然言語処理によるカルテ記載の補助など、診療の質向上と負担軽減に寄与。情報共有と連携の強化
地域医療連携において、患者の診療・投薬情報がリアルタイムに共有され、重複検査・投薬の回避やスムーズな引き継ぎが可能に。業務の効率化と働き方改革
書類業務の自動化、オンライン診療・問診ツールの導入により、医師の時間的余裕が生まれ、患者対応の質向上につながる。医療安全とトレーサビリティの向上
処方・検査オーダーの自動チェックや、患者情報の一元管理により、ヒューマンエラーのリスク軽減が期待されます。●導入に際しての課題
医療DXの推進は期待される効果が大きい一方で、実際の医療現場では以下のような課題や懸念も指摘されています。1. 初期導入コストと運用負担
新たなシステム導入や電子カルテの標準化対応には多大な初期費用がかかるほか、既存業務との整合性をとるための調整も必要となります。特に中小規模の医療機関では、人的・財政的リソースの確保が課題となります。2. 現場への定着と職員教育
新システムの導入によって一時的に業務が複雑化し、慣れない操作やフローへの対応に職員の負担が増加することがあります。医師・看護師・事務職員を含めた継続的な教育とサポート体制が不可欠です。3. インフラの地域格差
インターネット環境やITリテラシーの格差は、都市部と地方で大きく異なります。オンライン資格確認やデータ共有の前提となるインフラ整備が地域ごとに進捗差を生んでおり、全国一律のサービス提供には課題が残ります。4. 医療情報のセキュリティとプライバシー保護
医療情報は極めてセンシティブであるため、システムの脆弱性や情報漏洩への不安は根強くあります。特にクラウド型サービスの導入においては、データの取り扱いに対する慎重な判断とガイドラインの整備が求められます。5. 診療行為への影響と医師の裁量
AI診断支援など新技術の導入は、医師の裁量権や臨床判断との関係について慎重な議論が必要です。技術依存のリスクや、医療行為の本質的な価値とのバランスをいかに保つかも重要な論点となります。このように、医療DXは多くの可能性を秘めている一方で、導入にあたっては現場との整合性や医療の本質に関わる配慮も必要です。制度的・技術的な支援とともに、医療従事者が主体的に関われる形での進め方が重要です。