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電子カルテ情報共有サービスとは?―2026年度診療報酬改定が後押しする“つながる医療”の未来

2026/05/21

  近年、日本の医療業界では「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」が大きなキーワードとなっています。少子高齢化による医療需要の増加、医療従事者不足、地域医療連携の必要性など、多くの課題を抱える中で、デジタル技術を活用した効率的で質の高い医療体制の構築が求められています。
その中核を担う仕組みとして、現在、厚生労働省が整備を進めているのが「電子カルテ情報共有サービス」です。
さらに2026年度(令和8年度)の診療報酬改定では、新たに「電子的診療情報連携体制整備加算」が創設され、電子カルテ情報共有サービスへの対応や電子処方箋などの活用状況が、診療報酬上でも評価される方向へ進んでいます。
つまり、電子カルテ情報共有サービスは単なる将来の構想ではなく、これからの医療機関経営や地域医療連携において、実際に重要なテーマになりつつあるのです。

●なぜ今、「情報共有」が重要なのか

電子カルテ情報共有サービスとは、患者の医療情報を全国の医療機関等で安全に共有・閲覧できる仕組みです。
厚生労働省はこれを「全国医療情報プラットフォーム」の主要機能の一つとして位置づけています。
共有対象として想定されている情報には、以下のようなものがあります。
  • 診療情報提供書(紹介状)
  • 退院時サマリー
  • 健診情報
  • 傷病名
  • アレルギー情報
  • 感染症情報
  • 検査結果
  • 処方・投薬情報
  • 薬剤禁忌情報
これらの情報を、患者本人の同意を前提として、必要な医療機関が閲覧できる仕組みとなります。
たとえば、患者が紹介先の病院を受診する際、紹介状だけでなく検査結果や既往歴も事前に共有できれば、よりスムーズで質の高い診療が可能になります。
また、救急搬送時にアレルギーや服薬情報を迅速に確認できれば、医療安全の向上にもつながります。
 

●医療現場で期待されるメリット

1.重複検査・重複投薬の防止

電子カルテ情報共有サービスの大きなメリットの一つが、重複医療の削減です。
これまで、別の医療機関で実施された検査結果を確認できないために、再度CTMRI、血液検査などを行うケースがありました。
情報共有が進めば、過去の検査結果を参照できるため、不要な検査を減らすことができます。
これは患者負担の軽減だけでなく、医療費適正化にもつながります。
また、薬剤情報が共有されることで、重複処方や禁忌薬投与の防止にも役立ちます。
特に高齢患者では、多剤併用による副作用リスクが課題となっており、安全な薬物療法を支える基盤としても期待されています。

2.救急医療・災害医療への活用

救急現場では、「患者情報をどれだけ早く把握できるか」が治療の質を左右します。
しかし、意識障害や認知症などで本人確認が難しいケースでは、既往歴や服薬状況が分からず、治療判断に時間を要することがあります。
電子カルテ情報共有サービスが普及すれば、必要な情報を迅速に確認できるようになり、より安全で適切な初期対応が可能になります。
さらに、災害時にも大きな効果が期待されています。
地震や水害などでカルテが失われたり、地域外へ避難したりした場合でも、全国共通基盤で医療情報を閲覧できれば、継続した医療提供につながります。

3.マイナ保険証との連携

この仕組みは、マイナンバーカードを活用したオンライン資格確認システムと連携して運用されます。
患者本人の同意を得たうえで情報共有を行うため、プライバシーにも配慮された設計となっています。
つまり、「誰でも自由に閲覧できる」わけではなく、本人確認とアクセス権限管理を組み合わせた安全性の高い仕組みとして構築されているのです。
また、患者自身もマイナポータルを通じて医療情報を確認できるようになる予定です。
これは、自身の健康情報を主体的に管理する「PHRPersonal Health Record)」の普及にもつながると期待されています。
 

●2026年診療報酬改定との関係

こうした流れをさらに後押しするのが、2026年度(令和8年度)診療報酬改定で新設される「電子的診療情報連携体制整備加算」です。
これまでの医療DX関連評価では、「システムを導入していること」が中心でした。しかし、今後は実際に電子的な情報連携を行えているかが重視される方向へ変わりつつあります。
新設される加算では、以下のような取り組みが重要な評価対象になると考えられています。
  • 電子処方箋への対応
  • 電子カルテ情報共有サービスへの接続
  • オンライン資格確認の活用
  • 医療情報標準化への対応
  • 医療機関間での電子的情報連携
つまり、単に電子カルテを導入しているだけではなく、「地域の医療連携基盤として機能しているか」が問われる時代になってきているのです。
特に電子カルテ情報共有サービスは、今後の医療DX推進の中核機能として位置づけられており、対応状況が医療機関評価や経営面にも影響する可能性があります。
これは医療機関にとって、単なるIT投資ではなく、地域医療に参加するためのインフラ整備という意味合いを持つようになってきています。

●医療機関が直面する課題

一方で、導入・運用には課題もあります。

システム改修・費用負担

電子カルテ情報共有サービスへ対応するには、既存電子カルテの改修やネットワーク整備が必要になるケースがあります。
特に中小規模医療機関では、費用負担や人材不足が課題となることも少なくありません。

セキュリティ対策

医療情報は非常に機微性の高い個人情報です。
そのため、不正アクセス防止やアクセス権限管理など、高度なセキュリティ対策が不可欠となります。

運用ルール整備

どの情報を、どのタイミングで共有するのか。
現場負担を増やさず、実用的な運用ルールを整備することも重要です。
単に「つながる」だけではなく、「現場で使いやすい」仕組みにすることが、今後の普及の鍵になるでしょう。
 

●“点の医療”から“面の医療”へ

これまでの日本医療は、各医療機関が独立して情報を管理するの医療でした。
しかし、超高齢社会では、一人の患者を地域全体で支えるの医療が必要になります。
その基盤となるのが、電子カルテ情報共有サービスです。
必要な情報を必要なタイミングで共有できれば、
  • 医療の質向上
  • 医療安全の強化
  • 地域連携の促進
  • 医療費適正化
  • 医療従事者負担軽減
など、多くのメリットが期待できます。
さらに2026年度診療報酬改定では、「電子的診療情報連携体制整備加算」の創設により、情報共有できる医療機関が制度的にも評価される時代へ進もうとしています。
医療DXは単なるデジタル化ではありません。
「必要な人に、必要な医療を、必要なタイミングで届ける」ための仕組みづくりです。
電子カルテ情報共有サービスは、その未来を支える重要な社会インフラとして、今後ますます注目されていくことになりそうです。

(※本内容は公開日時点の情報です)

  参考:厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス概要案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001457777.pdf